高齢者に多い膝関節の痛みは変形性膝関節症です。この疾患は非常に多く症状を訴えている人は1000万人(厚生労働省調べ)います。病院でヒアルロン酸の注射をしたり、湿布を貼ったり、リハビリで電気、マッサージしても改善しない人も多いです。このブログでは何故痛くなるのかを解剖学的に紐をといていきます。
関節を構成する骨
膝関節を構成する骨3つ
膝関節を構成する骨は3つあります。
①大腿骨②脛骨③膝蓋骨
脛骨の上に大腿骨が乗っているだけなので安定性が無いことがわかります。膝蓋骨は大腿骨の前面に位置し、筋肉を動かす重要な役割(滑車の働き)があります。
靭帯の種類
関節を支える靭帯
膝蓋骨を安定させる靭帯は膝蓋靭帯、内外側縦膝蓋支帯、内外側横膝蓋支帯です。
前方、後方、左右の側方に骨がずれない様にそれぞれ靭帯が存在します。
靭帯が付くと安定感がましますね。
半月板
クッションの役割半月板
半月板はクッションの役割で荷重を分散と筋活動の調節しています。
関節包
関節の滑りと栄養を分泌
関節包は関節を包む組織で2重構造になっています。外側は骨膜からの続きで繊維膜と言います。内側の膜は滑膜と言い、関節の滑りを良くする滑液を分泌します。この滑液は軟骨に栄養を与える役割をしています。
変形性膝関節症などで水腫(膝に水が溜まる)は関節包が炎症を起こし、滑液の分泌が過剰となりたまります。
膝の曲げ伸ばしに関わる筋肉
大腿四頭筋
4つの筋肉で構成(大腿直筋、内側広筋、中間広筋、外側広筋)されています。大腿直筋のみ股関節とひざ関節を通る2関節筋と言われます。
大腿筋膜張筋
骨盤から脛骨(ガーディー結節)に付着する筋肉です。主に股関節に作用する筋肉ですが、O脚になると硬くなり、ひざに痛みが誘発することもあります。
鵞足
この3つの筋肉が付着する場所を鵞足と言います。ひざを曲げる、内側に捻じる役割があります。
内転筋群
内転筋群は(恥骨筋、短内転筋、長内転筋、小内転筋、大内転筋、薄筋)があります。ひざの動きには薄筋のみとなりますが、ひざ関節を安定させるのに重要な筋肉になります。
ハムストリング
3つの筋肉で構成(半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋)されています。膝を曲げる役割をしています。
腓腹筋
腓腹筋は内側頭、外側頭とありますが膝を曲げる役割をしています。
膝窩筋、足底筋
この筋もひざを曲げる役割をしています。
膝関節の可動域
ここからは膝関節がどのような動きが可能なのか考えましょ。
ひざ関節の運動は若干の内旋、外旋運動はありますが、主に屈伸運動がメインとなります。
《参考可動域》
①屈曲(120°~150°) ②伸展(5°~10°) ③内旋(10°) ④外旋(30°~40°)
関節の可動域は個人差がありますので、あくまでもこれは参考程度と考えて下さい。
ひざ関節は捻じれの運動に弱いことが分かります。そのためスポーツ外傷などは強制的に可動域以上の捻じれが生じて損傷することがほとんどです。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症とは軟骨がすり減ることで、ひざ関節の形が変形して痛みや腫れが誘発します。変形が進行し重度になると、軟骨がなくなり痛みがさらに強くなります。歩行困難、ひざの屈伸運動が出来なくなり床に座るのが困難など、日常生活に支障がでます。男性よりも女性の方に多い疾患です。
初期:軟骨には血管、神経の分布がないので、痛みを感じることはなく自覚症状はないことが多いです。ですが、前兆として立ち上がり動作や歩行のし始めに軽い痛み、違和感があるが時間が経てば痛みが無くなることがあります。ほとんどの方がこの症状では放置しているでしょう。
中期:立ち上がり動作での痛み、歩行時に痛みが強くなります。また関節の動きが悪くなり曲げるのが嫌な感じがします。さらに関節包に炎症が起こり、熱感や腫れ(水腫)の症状がでてきます。こと時に病院に行く人が多いとおもいます。
末期:軟骨が減りまたは消失し、ひざの痛みはさらに強くなります。正座が出来ない、歩行が困難、O脚変形などにより生活に支障がでてきます。末期になると保存療法も難しくなり、手術も検討しなければなりません。
原因は?
原因は様々あり下記の原因が考えられます。
- 加齢による軟骨の退行性変性。
- 肥満骨折、半月板、靭帯などの損傷の既往歴がある。
- 筋力低下
- O脚、X脚、回外足、回内足などの骨のアライメント異常や筋バランス異常。
変形性膝関節症の予防策
加齢による組織の退行変性は生理現象ですが、予防をすることで変形性膝関節症の発生リスクを抑えられます。
高齢者のなると基礎代謝が落ちるので太りやすくなります。毎日体重計に乗ることで体重をコントロールしやすくなります。毎日乗っていれば0.5キロ~1キロならば食事管理で簡単に落とすことが出来ます。太ってきてヤバいなと思って体重を測ると3~5キロ増えてることないですか?3キロ落とすよりも、0.5~1キロ落とすほうが体力的、精神的にも楽です。
筋力アップする。毎日5分でも良いから、運動習慣を付けることをお勧めします。運動は継続することが難しく多くの人が途中で挫折していきます。初めから張り切りすぎないように、物足りないなくらいから始めると続きやすいです。ひざ関節損傷の既往歴や筋バランスが悪い方も、筋力が向上することで症状が出にくくなり予防対策になります。
回内、回外足の方はインソールを使用することで、ひざの負担を軽減することができます。現在はとても良い装具がありますので利用されると良いと思います。
変形性膝関節症と診断されても諦めないで下さい
変形性膝関節症と診断されても、痛む原因は違うところにある事もあります。このことも知っておきましょう。レントゲンを撮っ軟骨と軟骨の間が狭くなっているのと変形性膝関節症と言われます。ただ、軟骨と軟骨が当たっても、初期は痛みが出ることは少ないです(軟骨には神経、血管の分布が無い)。それなのに痛みが強い場合は変形性膝関節症以外の疾患を想定する必要があります。上記に説明したひざの解剖を考えて見て下さい。ひざ関節には筋肉、靭帯など、多くの軟部組織が存在します。そのどこかが悪くてもひざ関節は痛くなります。実際に私が診た患者さんにも変形性膝関節症と診断されたが痛みが無くなくケースや正座が出来ることは少なくありません。なので、変形性膝関節症と診断されても諦めずにリハビリをすることをお勧めします。
まとめ
高齢者のひざの痛みのほとんどが変形性膝関節症と言われています。予防や初期症状で治療することで重症化の移行は少なくなります。しかし多くの方は自覚症状がある中期で治療を始めます。それは膝に関しての知識が無い故に放置という選択をしてしまします。このブログでは膝の構造を知っていただき、変形性膝関節症の初期症状の前兆で対策、または予防することで変形性膝関節症で悩まない方が一人でも増えれば幸いです。
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