初めて鍼灸治療を受ける人は不安感、怖いと感じる方が多いと思います。そんな方に少しでも不安が解消になるよう鍼灸治療を具体的に説明していきたいと思います。
鍼灸師とは
まず鍼灸師になるのには学校(専門学校3年、大学4年)で学び国家試験に合格しなければ資格を取得できません。授業は解剖学、生理学、臨床医学、公衆衛生学、リハビリテーション、東洋医学などを学びます。鍼灸といえば東洋医学のイメージですが学校では西洋医学もある程度学びます。
鍼灸師は資格取得後、専門分野に分かれていきます。
- 病院
- 鍼灸院
- 鍼灸整骨院
- スポーツトレーナー
鍼灸師の働き方
病院での役割
- リハビリでの機能回復に携わる。関節可動域の改善など機能回復を改善させるため鍼治療を行います。
- 末期患者の疼痛緩和ケア。薬が効かない患者に痛みを緩和させるために鍼治療を用いることもあります。
鍼灸整骨院
整骨院と併設している院。メインは整骨院でオプションとして鍼灸治療をおこなっています。筋緊張の緩和、血流改善を目的に行います。(※院によって異なります。)どちらかというと東洋医学ではなく西洋医学的に筋肉、神経にアプローチします。 また、美容鍼を導入している鍼灸整骨院も増えています。
鍼灸院
鍼灸院では専門分野に分かれてきます。
- 腰痛、肩こり、神経痛などの慢性疾患を扱う鍼灸院
- 美容に特化した鍼灸院
- 婦人科疾患、不妊治療に特化した鍼灸院
- 耳鳴り、目まいなどの未病(症状はあるが病院での検査で異常がないもの)に特化した鍼灸院
内科的な疾患を診ている鍼灸院は東洋医学(経絡治療、中医治療)に基づき治療を行います。東洋医学の知識が無いと理解するのが難しいです。
スポーツトレーナー
プロやアマチュアのスポーツ選手のからだのコンディショニングを整えたり、怪我の治療をおこないます。
どんな方が鍼灸治療を受けるのか?
上記で鍼灸師の活躍する場を記載しましたが、鍼灸治療の受給率は非常に低いです。鍼灸治療に初めて興味をもつ方は病院、整骨院、整体院などに行き治療をしたが思ったように改善されず、最終手段として鍼灸治療を選択する人が多い気がします。その要因は鍼は痛い、お灸は熱いというイメージが非常に強いからです。
私が診てきた鍼灸治療を初めて受けられた方のほとんどが、思っていたより全然、痛みを感じないと回答する方が多いです。個人的には鍼灸の受給率を上げていきたいので、鍼灸の素晴らしさを多くの方に知っていただきたいです。
どんな鍼を使用するのか?
使用する鍼にも様々な種類があります。主に長さと太さの違いがあります。 多くの鍼灸院はステンレス製で使い捨ての鍼を使用しているのため、感染症の心配はありません。
鍼の太さ
一般的なワクチン接種の注射鍼は太さ0.5mmです。鍼治療で使用する鍼は太さは様々ありますが、初めて鍼治療をする方には基本0.16mm(1番)を使用します。注射と比べるとかなり細いといえます。患者さんに説明するときは『髪の毛位の細さです』とお伝えします。
鍼治療の鍼は0.02mm太さが変わっていきます。患者さんの症状や体質などで刺激量を増やしたいときは太い鍼を使用します。 ちなみに美容鍼で顔に刺す鍼の太さは0.12~0.14mmとさらに細い鍼を使用します。
鍼の長さ
鍼の長さは、患者さんの体格や刺す場所によって変わります。例えば頭部や顔に刺す時は短い鍼を使用し、お尻などの厚い筋肉には長い鍼を使用します。 一般的には15mm~60mmの長さの鍼で使い分けています。
鍼の痛さには2種類ある
鍼治療はさほど痛くないと先程、お伝えしましたが、鍼治療は皮膚、筋肉を刺すので痛みが生じることもあります。その痛みには大きく2種類あります。
切皮痛
これは鍼を刺す時に感じる痛みです。皮膚には痛みを感じる神経(感覚神経)があり、細かく動かせる筋肉(手指など)には多く、大きい筋肉(お尻など)には少ないです。神経が多いところは痛覚が敏感なので切皮痛がでる確率は大きいですが、神経が少ないところは切皮痛は出にくいです。鍼をいつ刺したか分からいくらい全く痛みを感じない方も多いです。
施術者もこのなるべく切皮痛を出ないように、押しでと言う方法で患者さんに負担がかからないように行っています。
鍼治療は全く痛みが出ないとは言い切れませんが、痛くても『チクッ!』程度です。鍼のイメージは注射のような痛みと想像している方が多いですが、ほとんどの方が鍼治療後に思ったより全然痛くないと言われています。
ズーンと感じる痛み(響き)
鍼治療の特徴な感じ方の1つに『ひびき』があります。ツボや筋緊張の場所に鍼が刺さるとズーンと感じることがあります。それを『ひびき』と呼んでいます。このひびきが気持ちいと感じる人と苦手と感じる人がいます。 この感覚は痛みではないのですが、苦手の方には痛いと感じてしまうこともあります。
鍼治療の服装は?
鍼は皮膚に直接刺すのでどのような格好で施術を受けるのかも気になるところだと思います。腰など服をめくって打てるところは服を着たままで行いますが、背中や肩周りは服を着たままでは施術できないので専用の患者着(下の写真)に着替えていただきます。


鍼治療の方法
鍼治療の方法がいくつかありますので紹介します。鍼を刺してからの方法がいくつかあります。これらの方法は刺激する量で変わってきます。
- 鍼を刺してすぐ抜く方法(低刺激)
- 鍼を刺して15分くらい刺した状態でおいておく。(中刺激)
- 鍼を刺した状態で上下に動かしたり、回したりする。(高刺激)
- 鍼を刺した状態で鍼に電気を流す。(高刺激)
患者さんの症状や体質によって鍼灸師が考え、提案し同意を得てから行います。初めての方は基本的には低刺激からおこない、状態を見極めながら刺激量を徐々に上げていく人もいれば、低刺激のままで継続していく人もいます。



鍼治療の効果
- 筋緊張の緩和:硬くなっている筋肉に刺すことで筋肉が緩みます。血流改善:筋肉が緩むことで血液の流れが改善されます。
- 痛みの緩和:組織を刺激することで痛覚を鈍くさせます。また脳からの痛み抑制物質を放出しやすくします。
- 自律神経の調節:体制内臓反射を利用して交換神経の興奮を抑え、副交感神経を優位にさせます。
- 癒し効果:ホルモンのオキシトシンが分泌されます。(オキシトシンは幸せホルモンと言われています)
※その他にも鍼治療は様々の効果があると言われていますが、上記は科学的根拠が立証されています。
鍼治療後の身体の反応
鍼治療後に体に反応が出すぎてしまう方もいます。鍼の刺激量が過剰になると治療後に体が『ぼ~っとしてしまう』『だるくて重い』ことが起こります。このような症状は一時的な反応なので一晩寝れば翌朝改善されていることがほとんどです。
治療後、血流が良くなっているのでお風呂は1~2時間はあけ、お酒は飲みすぎない程度にしましょう。
まとめ
初めて鍼治療を受けようとしている人は、何かしらの症状を抱えていて悩んでいるひとです。ただ鍼は痛そうで怖いというイメージで鍼灸院へ足が運べない方が多いと思います。全く痛みが無いとは言えませんが、鍼の太さは注射針よりかは、かなり細いので思っている以上の痛みはありません。
鍼治療をする前に鍼の事を少しでも理解することで、施術の不安が解消されると思います。
鍼治療で改善されている人はとても多いので、『もっと早く来れば良かった』という方も少なくありません。ですので安心して鍼治療を受けていただけると良いと思います。
多くの方が鍼治療の素晴らしさを知って頂ければなと日々精進してきます。
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